以前より、教師や学校内では自立が中高校の目的だという声をよく聞きました。そのよく言われている自立を言いかえると、自分のことは自分でできる。自分の将来は自分で切り開くという意味だと思います。でも、それでいいのでしょうか。個人の自立は当然必要ですが、自分のしたいことをみんながし始めたら、それは自己チュウの集団に過ぎないのではないでしょうか。

自立の本当の意味は、人類がその種として自立すること。人類がその将来のために、みんなで成長してゆくこだと思います。自分のためではなく、お互いのために生きること。自分の国のためだけではなく、他の国の人々のためにも、人類全体で将来に向かって生きてゆくことではないでしょうか。それが本当の社会性です。国家間のいがみ合いは、まだまだ人類が自立できていない証拠ではないでしょうか。

養育機関で子どもたちを育てるときに、我々が意識しておかなければならないことは、一人ひとりの自立は当然の前提ですが、子どもたちが社会のために生きてゆくことを学び、遠く将来の人類を見据えて、今を考える人に育つこと、社会の進化に貢献すること、社会が犯した過ちを二度と起こさないように正義を身に着けること、どのようなハンディを持った人にも、人類として生きてゆく必要があります。それはあえて言いますが必要なのです。その人たちとともに生きてゆくことを学ぶことが本当の自立への道ではないでしょうか。