社会の階層的構造といじめについて

先日、高校生のいじめに関するグループワークで、「いじめる側の気持ち」を考えてもらいました。6グループに共通して出てきた気持ちは、次の3つでした。

➀面白半分

②ストレス発散

③優越感

ここでそれぞれについて、すこし考察してみます。

「➀面白半分」は、大人としての成長が未熟だから生じる感情でしょう。子どもたちは成長につれて様々なソーシャルスキルを身に着けてゆきます。レベルの高いコミュニケーションスキルでは気持ちよく議論することや相手の気持ちを思いやりながら関係性を保つことなどを身に着けますが、面白半分という気持ちは、相手の気持ちを考えることができない状態から生まれます。まだまだスキルの獲得が未熟だからなのです。

「②ストレス発散」は、子どもたちの関係性やまたは大人との関係性の中で、プレッシャーをかけられているからです。そして、そのストレスをおとなのように上手にすり替えたり発散したりできないのでしょう。その術を家庭や学校が教えていないので、子どもたちの社会構造のなかで、弱いものをいじめて自分たちの存在を確認し安定するというようなストレス発散をしてしまうのです。

「③優越感」、これが一番厄介な感情です。優れているということはどういうことなのでしょう。人間にはそれぞれ得意なスキルがあります。歌が上手な人、勉強ができる人、バスケットボールが上手な人、リーダーシップが取れる人、彫刻が得意な人、人にものを教えるのが得意な人、会社運営の経験の長い人、スマホの扱いの上手な人など様々な「得意」があります。しかし、現在の社会では、出身大学や所属企業、議員、役職などの肩書などで「偉い人」という社会的な階層構造があり、それで大人たちは安定していたり、上昇志向を生んでいます。スキルを持っている人=「偉い人」=「権力を持つ人」という構造が日本社会にはしみついています。学校では、校長先生が一番偉い人、次に教頭先生、次に担任の先生、次に勉強のよくできる子、運動のよくできる子というように、「偉い」順のランキングができています。この権力構造のランキングの中で、下位の子どもに対して、いじめることで優越感を感じ、階層の中の位置を確認し安心するのです。偉さの中の順位の位置を下位の子どもをいじめることで上位を確認し優越感を感じているということです。

さて、ではこの「いじめ」を無くすためにはどのような対策が必要でしょうか。現在は対処療法しか提唱されていません。いじめ構造にチームで対応し、担当者間で役割り分担するとか、上手にマニュアル化されています。また、アンケート調査により、少しでもいじめが起これば、把握できる体制をとっています。しかしこれらは起こるという前提で取られている対策です。

では、起こることを未然に防ぐ方法、いじめるという行為をおこさない方法は、いったいあるのでしょうか。それは上記3つの感情を抱かないことです。つまり、ソーシャルスキルを十分身に着け、他者の感情を想像でき、つらい思いをするような態度や言動をしてはいけないと思うこと。ストレスを感じたら正しい方法をその解消ができること。いじめることのようなマイナスの行為ではなく、スポーツや趣味などのプラスの活動でストレスを発散できることが必要です。3つ目の優越感を無くすことは、子どもたち個人の努力だけではなく、現代社会の構造に問題があります。ですから、この問題は国会などで取り上げ、文科省の指導で現在の教育にこの真の公平さの徹底と、日本社会における権威のピラミッドを崩壊させることです。これはなかなか難しいことですが、誰かがやらないと、いつまでたってもこの「いじめ」はなくならないでしょう。